3幕『帰蝶ではなく濃姫として』

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あとがき  信長の正室として嫁いできた濃姫。その実像は、500年近くたったいまでも、多くの謎に包まれたまま。  嫁いできたあと、濃姫は突如として歴史の表舞台から姿を消したのである。  濃姫がどうなったのかを確実に知る者は存在しない。あの信長の正室でありながら、そのほとんどが謎に包まれている濃姫。現代の多くの人の想像力を掻き立てる、戦国最大の謎。  信長とのあいだには、子どもがいなかったというのが通説。  暗殺された、道三死後に美濃に返された、など様々な説がある。また、関ヶ原の戦いの数年後まで生きていた、江戸初期まで生きていたとも言われ、信長とのあいだに、実は娘がいた、とも言われている。  謎に包まれながらも、ひとつだけ思えることがある。  従兄妹(いとこ)の可能性がある明智光秀と仲睦まじかったとされる濃姫は、まむしと呼ばれた道三の娘として大きなプライドを持っていたはずだ。光秀と別れ、悲しみながらも、自分の運命から目を背けようとは決してしなかったのではないだろうか。  実は平和主義者であり、心優しき男だったとも言われる信長が、そんなひたむきに生きる濃姫をないがしろにするようなことは決してしなかったはずである。  濃姫はなぜか表舞台から姿を消したものの、陰で懸命に信長のために躍動していたのではないだろうか。
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