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蒼ノ下雷太郎
001
Aと久々に駅前で再開した。
その日は、仕事が早く終わり、会社の上司は忙しいという好条件で、嫌な飲み会に無理やり付き合わされなくて済む状況だった。
でも、いざ、そうなってみても、どう時間を潰すかと悩んでいたら、中学時代の同級生に会ったのだ。
奴はサッカー部で、俺はバスケ部。だから直接交流はなく、グループも違っていたが、多少は顔見知りで、電話番号の交換もした。ま、今は知らないけど……そんな薄い付き合いしかなかったが、二十代後半で同郷と会うと嬉しくなるものだ。
002
「ほんとお前、久しぶりだよな。おらっ、飲んでるか」
居酒屋で酔った俺を、Aは苦笑しながら相手する。
「ったく、オレは飲んでるよ。お前昔と全然変わってないな。くだらねー下ネタとか、いい加減卒業しろよ」
「分かっTENGA。しかし、そう簡単には卒業できなくてなぁ……いや、俺下ネタなんて久々なんだけどな、本当は」
雑居ビルの中にある居酒屋。カウンター席の他に、四人ぐらいが座れるテーブル席もあるが、俺らはカウンターで男二人で飲んでいた。
「昔はこっちんこっちん、アホみたいに歌ってたけどなぁ。ったく、社会人ってこんなめんどーなもんだとはな。俺、あの頃は想像もしてなかったぜ」
「……全くな。オレもそうだ」
Aは昔から口数少ない方で、クールな印象のある奴だったが、久々に会ったこいつは、何だか前より印象が……何ていえばいいのだろうか。苦労が身に染みてるというか、妙な深みを感じさしていた。
だからか、会社の話題は出しても、迂闊に「お前、何の仕事やってんの」と聞けなかった。
003
だが、それでも昔の話題だけで何時間もつぶせるもので、俺は終電が迫っても飲み続けていた。
「おいおい、そろそろ帰ろうぜ。お前、まだ水曜日にこんな飲んで」
と、Aが笑いながら言う。
「いいんだよ、いいの。いつもムカつく上司に耐えてんだから。今日ぐらいさ」
「タイミング悪いっての。金曜に浴びるほど飲んでおけよ……ったく」
「いいから、付き合ってくれよぉ」
「しゃーねぇな」
Aはあと一杯だけだぞ、とコップにビールを注いでくれた。クールなようでいて、何だかんだで人情味のある奴だ。そういや、昔からこいつはモテていたなぁ。
「今は、そんな欠けらもないけどな」
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