奪還

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「この20人に抜けられたら、うちは回らなくなってしまうよ!!」 鬼瓦さんだった。 そりゃそうだろう。おそらくイバラスタッフの契約更新日まであと数日しかない。一気に20人抜けたら作業が止まるどころか、下手すりゃ仰天商事ごと潰れてしまう。 「イバラスタッフさんに人集めてもらってください。またどこかから優秀なスタッフを引っ張って来てくれるんじゃないですか?安く使えるみたいですし」 「いや、でもニコスタさん!!困るよ!!今までだって散々あんたのところのスタッフ使ってあげたじゃないか!!それを簡単に手のひら返したように、……こんな」 「最初にニコスタを捨てたのは鬼瓦さんでしたよね」 「うっ……」 「企業さんにも派遣会社を選ぶ権利があるように、派遣会社にも企業を選ぶ権利があるんですよ。おかしなところに大事なスタッフを送り込むわけにはいきませんからね」 「……うぅ」 鬼瓦さんと井原さんは無言で動かなくなった。 これが、ニコスタが全てに勝利した瞬間だった。
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