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「会社行かない……っていうより、行けない…かな。」
事情を詳しく話すわけにもいかず、彼、仙川篤の言葉に一人言のように呟くと、
「じゃあさ、俺に付き合ってよ。俺、実は明日から暫く休みなんだよね。まぁ、ちょっと頑張りすぎて手首やっちゃって、酷くなる前にちゃんとケアしろってオーナーから強制的に休み取らされた。思わぬ形で夏休みってとこだな。」
「手首を…」
「そっ。職業病だよ。幸いこの前、ちゃんと病院で診て貰ったら大したことねえし、暫く使わずに休めばいいだろうって。」
「そうなんですか…。」
「だけどさぁ、この仕事するようになって長い休みなんて取ったことねぇし、一人でどーすっかなぁって悩んでたんだよ。結局、一人だとやることなくてカットの練習したり手首使っちゃうと思うんだよなぁ。」
と私に言いながら私に
だから付き合えよ。無駄に手首を使わねぇようにあんた見張り役な。」
と、私に向けて手首を振って見せる彼。
「えっ、でも…」
私が躊躇していると
「そもそも、あんたさ。これから自分の部屋に一人で帰って、耐えれんの?俺は無理。こんな温もりを手に入れてまた一人になるなんて耐えらんねぇわ…」
後半の言葉は消え入りそうな声で呟いた彼の真っ黒な瞳が一瞬、揺れたような気がしました。
確かに今は一人になりたくない。
と思っていた私は、半ば強引に話を進められ…
結局、私は彼ーーー、
仙川篤と瀬戸内海に面した小さな島にやって来たのでした。
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