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フミさんと言うその女性は篤のお母さんではありませんでした。
ただ、篤が子供の頃、フミさんがずっと面倒をみていたそうです。
「しかし、あのあっくんがねぇ。こんなかわいらしい子を連れて来るなんて。ねぇ…っでお式はいつなの?」
「お、お式っ!」
再び大きな声で叫んでしまいました。けれど慌てているのは私だけのようで…
「まだそんなんじゃねぇよ。まっ、俺は何れそうなればいいと思ってるんだけどねぇ。それより腹減った。飯、食いたい。後……」
「玉ねぎのかき揚げ!」
「玉ねぎのかき揚げだね?」
凄い…声が揃ってる。
「さすが、ババァ。」
と、篤が指をパチンと鳴らせば
「でしょ?言うと思った。あんたは本当に帰ってくればいっつも同じだねぇ。あたしだって他にも色々料理できるんだけどね。それにしてもババァは余計だよ。」
そう言うと篤の頭に軽くゲンコツを入れ嬉しそうに笑いながらフミさんは台所へと入って行きました。
フミさんは
「歳は内緒だよ。」
と言っていましたが、後で篤がこっそり
「ああ見えて60越えてるんだぜ。」
と教えてくれました。
そして、フミさんがあっという間に作ってくれたお料理はどれも家庭的ですごくおいしくて、中でも山盛りに積み上げられた島の特産品である玉ねぎで作ったかき揚げは絶品でした。
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