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次の日の朝、篤は自転車を二台用意していました。
「乗れるよな?」
「も、もちろんっ。」
「どもってる。」
と疑いの目を向ける篤。
「じ、自転車くらい余裕よ。目つぶっても乗れるから。」
「ハッハッハ…、目つぶっちゃダメでしょ。ムキになるなよ。ホントかわいいよな、アヤは。」
「っ…、」
今、アヤって…
さらっとア、アヤって呼ばれた…
突然の名前呼びにあたふたするのは私ばかりのようで、篤はなんてことない風に続けます。
「まっ、取り合えずついてきて。」
そう言うと篤は颯爽と自転車で走り出しました。
私も慌てて漕ぎ出しました。
篤の手前、ああは言ったけれど、やはり学生の時以来に乗った自転車の運転は危なっかしいものでした。
漕ぎ出して早々、若干、バランスを崩しハンドルが不安定に揺れたものの、直ぐに落ち着いた走りが出来るようになりました。
その様子を見て篤が
「やるじゃん。」
と言えば、私も
「まぁね。」
と、得意げに返したりして。
久しぶりの自転車に乗り頬に当たる風を受け、気付けばすごく楽しんでいる自分に少し戸惑っていました。
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