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「後はあっくんの腕の見せどころ?…何てね。」
フミさんが出掛けて急に部屋が静かになり場が持たなくて、
さっきからずっと黙って突っ立ったままの篤にわざとらしくおどけて言うと、
「おぅ、まかせとけ。」
と笑顔で応えてくれる篤。
もう何度となく見慣れたあの笑顔に不覚にもまたドキッとしてしまいました。
篤は椅子に座ってもらった方がやりやすいからと、私をこの家で唯一の椅子が置いてある食卓へ連れていき、そこに座らせました。
自分の鞄からワックスを取ってくると、篤自身の手により短く切り揃えられた髪にそれを軽く撫で付け手際よくセットしてしてくれました。
最後に前髪をサイドに軽く流すとフミさんに渡された小さな赤い花の付いた髪飾りをそこにつけてくれました。
鏡を覗くとおデコを出した姿が見慣れなくてつい目を反らしてしまいました。
「似合ってる。顔上げなよ。誰がセットしたと思ってる?」
と、俯く私の顔を覗き込みおどけて言う篤。
さっきとは立場が逆転です。篤の言葉に自信を貰い顔を上げると、
「メイクもしてやるよ。」
と、言ってくれました。
「えっ…」
戸惑っていると、
「ほら、化粧ポーチ持ってきて。」
と言われ客間に置いている鞄から化粧ポーチを取り出しました。
早速、篤に普段私が使っている化粧ポーチを渡すと、今度は篤も私の前にイスを置き向かい合う形でメイクを始めました。
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