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「へぇ、お父さん篤にそんなこと言ってたんだ。知らなかったなぁ。」
俺は取り敢えず、最初の方だけあやに話した。
後で言ってた方は俺と親父さんだけでわかり合っていればいいだろ?
確かに俺も思う。
あやはなかなか手強い。
けれど知ってる。
控えめでいてそれなのにとても芯が強くて。
「あや…」
「ん?」
「幸せになろうな。」
俺の言葉に当然の笑顔が返ってくる。
あの日、VIPルームで髪を切ったのは偶然じゃないなんてあやは知らないんだろうな。
あの日、予約もなしに突然、髪を切りに来るなんて…きっと、何かあったんだと咄嗟に思った俺の勘はなかなか信用できるんじゃね?
そう思った俺はたまたま古くから親交のある和に…
そう、今や各方面の業界から引っ張りだこの空間デザイナー、堀江和に予約変えてくれと頭を下げた。
本当ならあの時間は和のものだ。
少し伸び過ぎた髪をさっぱり切ってくれと頼まれていた。
頭を下げる俺に一瞬、きょとんとした和は、
ーーーーいいよ、篤の一生が掛かってんだろ?
そう言うとあっさり予約を変更してくれた。
あいつだって忙しくて中々、予約取れる状況じゃないのに。
そして、俺はそのチャンスを無駄にしないよう…
俺はあやに勝負かけたんだ。
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