219人が本棚に入れています
本棚に追加
/79ページ
あや、
知らないだろ?
俺があの日、どれだけの偶然を用意したのか。
全部を話すのはーーー
そうだな、
ずっと、ずっと、ずっと先だな
お互い、じいさん、ばあさんになっても手繋いで散歩行ったりして、
でもって、時々、庭に椅子だして俺があやの髪を切ってやって…
それでその日がいい天気で、
風が心地よくて、
ああ、幸せだなって思ったなら
そしたら、本当のこと話そうか。
それまではまだまだ格好つけさせてよ。
それくらいいいだろ?
「篤?やっぱり二日酔い?大丈夫?」
俺が遠い未来を見ていると隣からあやが心配顔で覗き込んできた。
「あや…」
「ん?」
「結婚しよう。爺さん、婆さんになっても手繋いで笑ってよう。」
俺の突然の言葉にあやが一瞬、きょとんとしたけれど直ぐに笑顔でいっぱいになる。
「もぉ…なに、改まってプロポーズとかこんな朝に突然だし…」
口ではそう言いながらも嬉しそうな顔にホッとする。
「末永くよろしくお願いします、旦那様?」
おどけて言うあやに俺も答える。
「よろしくお願いされます。」
二人で同時に吹き出して、笑い声が部屋に響く。
このまま、幸せが続きますように…
ガラでもないことを心の中で祈りながら俺はあやを抱き寄せた。
終
最初のコメントを投稿しよう!