バレンタインは失恋記念日

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僕は演劇部に所属している高校3年生の男子で、演劇部の中ではあまり目立つ存在ではなくて公演の時は脇役が多かった。 僕は自分自身、二枚目のイケメンではないし特別演技が上手いわけではないから、演劇部の中のポジションとしてはこんなものだろうと思っていた。 でも演劇は好きだし、台詞を覚えたり演技をするのもそつなくこなしていたからか、必ずレギュラーで出演していた。 僕の高校では9月に文化祭があり、僕の演劇部も講演会を開催するけれど、3年生にとっては最後の講演会になり、僕達3年生はこの講演会を最後に引退することになる。 僕はやはり脇役だったけれど比較的出番が多く、台詞も主役と同じくらい多かった。 9月の文化祭当日、舞台に上がる前はすごく緊張したけれど、いざ舞台に上がったら演技に集中することができて、台詞を間違えることもなく演技を終えることができた。 僕は、3年間自分なりに演劇を一生懸命やってきて、最後の公演にも出演して最後までやりきったという思いがあり、僕はとても満足していた。 公演の最後に出演者全員が舞台上に並んで、主役男子の翔君がお客様に最後の挨拶をして幕を閉じた。 その後、出演者が公演会場の出口に並んでお客様のお見送りをしたけれど、主役男子の翔君のところには多くの女子が集まっていて、たくさん花束をもらっているようだった。 僕はその光景をうらやましく感じながら見ていると、花束を持った1人の女子が僕の目の前に立って声をかけてきた。 「あの~」 僕は、てっきり翔君に花束を渡したい女子だと思って、 「翔君ならあそこにいるよ!」 と指差しながら声をかけた。 するとその女子は慌てて、 「いいえ違います。  私、若林君のファンなんです。  これ若林君に…」 と言って、僕に花束と手紙を手渡してきた。 思わぬ事態に僕も慌てて、 「えっ、ありがとう!」 とお礼を言うと、その女子は笑顔になって僕に頭を下げて、その場を立ち去った。
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