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(何!?これ、どーゆー状況?…オレなんかしでかしたのか?)
必死に記憶をプレビューするが、思いたある節がない。
「あ、の」
恐る恐る目の前の男を伺う。人払いでもしたのか、周りにはスタッフらしき人影も見当たらなかった。
「ウチの事務所に来なさい」
吉永は確かにそう言った。実年齢は非公開。それでも推定80オーバーな本来老人であるはずの男は、妙に力強く拓海の腕を握り直す。
突然の出来事に視線も腕も外すことができないでいる拓海に
「この世のあらゆる生命には、己の在るべき場所がある」
薄緑のメガネレンズの奥に有無を言わせぬ瞳。拓海はまだ返す言葉の用意もできずに、次の言葉を待った。
と、そこにエレベーターの到着を知らせる電子音。辺りを見回すようにして降りて来た古閑が、一瞬、その動きを止める。そしてすぐさま状況を把握すると90度に腰を折り、言った。
「吉永会長。本日は本当にありがとうございました」
拓海の腕は相も変わらず吉永に支配されている。
「ウチの佐奈が何か失礼を…?」
そこでようやく顔をあげた古閑の全身から滲み出す怒りに、拓海はハッと腕を引いた。
「近いうちに下の者から連絡させる」
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