第1章

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「今回のブームが今までと大きく違うのって、十代・二十代だけじゃなくって、アラフォー・アラフィフ世代まで広がってるってことだと思うんですけど。そんな幅広い年代にウケてるのが凄いですよね。もちろん私たち系にも大人気の方だと思いますけど(笑)早く結果がみたいです」 “オネエ系エッセイスト・Rocca”が絶妙な返しをみせる。 「皆さんほぼ確信されているようですが、どういう結果になるか…さあ、それでは参りましょう。“好きな男性芸能人”栄えある第一位の発表です!」 カメラは特設したステージ前の観客席に切り替わる。それぞれに名前の書かれたウチワを胸の前で握り、祈るように目を閉じるのは十代、三十代…年代様々な“女の子”たち。 と、そこに、アイドルグループ “システム5”の新曲が流れ、会場は悲鳴に近い歓声。大画面を擁する渋谷スクランブル交差点、家電量販店のテレビ売り場の前でさえ、ほとんど同時に同じ状況となった。 「うわーーー!やっぱりタクミ兄が1番だった!!ほら見てっ」 ソファから転げ落ちるように液晶画面に張り付いた経堂真弓(きょうどう・まゆ)は、“好きな男性芸能人1位”なりたてほやほやの幼馴染み、佐奈拓海(さな・たくみ)が座る方を興奮ままに振り返る。 「うるせーよ、マユ。今めっちゃ強いヤツと闘ってんだから静かにしとけっ」 何食わぬ顔で携帯ゲームを握る拓海は、その実、肺が空になるほどの安堵のため息を心でついた。     
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