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拓海に迷惑をかけまいと小さいとは言えない嫌がらせに耐えていたある日。それははっきりとしたイジメに姿を変えかけていた。足重く玄関を出る。とそこに、息を切らせ紙袋いっぱい自分のサインを両手に抱えた拓海が立っていたのだ。
「えっ!?あっ…そう!マユが泣くなんてよっぽどだからなっ ピンときたっ」
なんとか取り繕った拓海は「オレのせいだな…ほんと、ごめん」その顔を神妙に変える。
「タクミ兄はなんにも悪くないよ!僕がちゃんと断らないから…」
意を決したように真弓が頷く。
「でも、今回はちゃんと自分で断わる。だからタクミ兄は気にせずお仕事頑張って」
「マユ…?」
「ほらっ 早く行かないと遅刻しちゃうよっ」
「え…?あ、ああ。じゃあまた夜、収録終わったら来てやるから」
「来なくて大丈夫っっ」
真弓にくるりと玄関を向かされ、そのままの力で靴を履いた拓海の背中に真弓が言った。
「僕、歌ったり踊ったり演技してたりしてるタクミ兄が大好きなんだっ だから僕のことは本当に気にしないでお仕事頑張って!」
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