第1章

3/8
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/27ページ
アイドルとしてデビューしてから常に付きまとう他者からの評価。それが自分の価値であり、この世界での存在意義ということを痛いほどに理解している。特に拓海の所属する、超が何個も付くほどの弱小事務所のタレントである自分にとっては。 「わっ2位の人と倍以上の大差だって!!」 さながら犬のように拓海の足にじゃれ絡み、やったやったと全身で喜びを表す真弓に、途端、拓海の顔はみるみる赤く染まっていく。 そう。国民的アイドルグループ“システム5”のメンバーであり、中でも随一の人気を誇る佐奈拓海は、この幼馴染みである少年にもうかれこれ15年、つまり物心ついてからひたすらに片思いをしているのだ。 「今日グラタンにしてもらわなきゃっ。ねっ!タクミ兄の好きなアレ。僕、頼んで来るっ」 とてててて、と効果音でも鳴らしそうな足取り(本人的には全速力)で下のキッチンに向かった真弓は、身長166センチ程のどこにでもいそうな変哲もない少年だ。 体重は秘密(ぽっちゃり体型が悩みらしい)。一重のさっぱりとした顔立ちは本人曰く『その辺に転がっている石ころ似』もしくは『消しゴムで雑に消したような顔』らしく、運動も勉強も中の中なら育った家庭も中の中で、自分がもし自慢できることがあるとすれば、幼馴染みである拓海のことだけだ、と真弓は常々思っている。 だかしかし、拓海にとっては唯一絶対の超絶可愛い生き物らしい。     
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!