第1章

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真弓と出掛けたアミューズメントパークで古閑に声を掛けられたのが中1の秋。まるで興味がないとその誘いを断り続け(真弓と遊ぶ時間がなくなるだろーが!)、それでも止まない猛アタックに「タクミ兄が有名になったら、僕嬉しいな」の真弓の一言で応じた中2の春。 それから高2の今に至るまで、自分より遥か志し高くレッスンや仕事に打ち込む仲間たちを嫌という程目の当たりにしてきた。 「努力が結果に繋がらない辛さ、お前にもわかるよな?」 古閑は拓海の性格をよく理解している。こうなるともう、拓海に逃げ場はない。 「…わかりました」 せめて真弓の母お手製グラタン(真弓と拓海の大好物)だけは、真弓と一緒に食べたい。その言葉をごくんと飲み込む。 「助かるよ拓海。30分後に迎えに行くから」 電話を切った直後。とてててと階下からこちらに向かう真弓の弾んだ足音に、拓海は急いでソファに寝転がりゲームを再開する。 「タクミ兄!お母さんが、もちろん今日はグラタン…」 「マユ、わりい。この後仕事、入っちゃったわ」 「えっ…あ……そっか。仕事ならしょうがないね…」 真弓を直視することができない拓海は、その悲しみ色濃い空気にさえ居たたまれず「ごめんな。お前の誕生日なのに」と投げるように言った。 今日6月21日は真弓の16回目の誕生日で、拓海にとってはこの1歳年下の最愛の幼馴染みがこの世に生まれてきてくれた、何よりも大切な1日だった。     
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