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このたった1日のオフをもぎ取るために、ほとんど1年前から古閑に頼み込み、その対価として十二分すぎるほどの仕事をこなしてきた拓海は、それを1ミリも感じさせない温度で
「そいや、コレ。お前欲しがってたヤツ、たまたま見つけたから」
リュックから取り出した紙袋を後ろ手に差し出す。どのタイミングでどんな風に渡そうか、ここ数日そればかりをアレコレ考えていた真弓への誕生日プレゼント、だった。
「わぁ!これ、あの時計!?発売日すぐに完売しちゃってたのに…すごい!ありがとう、タクミ兄」
精一杯に明るく振舞う真弓に、本来、拓海の方が泣きたい気分だ。
「そうなの?そんじゃ、まあよかったな」
予約一切なし店頭のみ販売の時計のために、睡眠時間を削り全力の変装で3時間並んだ成果。
それは真弓の笑顔一つで報われるはずで、その笑顔をパワーにまた1年頑張れるーー予定だった。
「そんな悲しそうな顔すんなよ。半日遊んでやっただろ」
学校にもろくに通えない拓海には“普通の男子高生”と比較のしようもないが、他メンバーや他の芸能界の仲間に比べれば、真弓は驚くほどに幼い。
欲しがるものや興味を持つ対象はもとより、喜びも悲しみも、感情すべてを隠すことなく拓海にぶつけてくる。そしてその汚れのないまっすぐな真弓だから、拓海は好きになったのだと思う。
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