第1章

8/8
前へ
/27ページ
次へ
自分のせいで真弓に悲しい思いをさせている。その事実は拓海の胸を傷ませ、同時に得もいえぬ喜びをもたらした。 「喜美子(きみこ)さんにも謝ってくるわ」 喜美子というのは真弓の母で、拓海の母の大学時代からの親友。シングルマザーで働き詰めだった拓海の母に代わり、幼い頃から我が子のように世話を焼いてくれた言わば第2の母のような存在だ。 「じゃーな、マユ。また連絡する」 このままここにいて、真弓が涙でもを見せようものなら衝動的に抱きしめかねない。拓海は可能な限り真弓を見ないように部屋を後にした。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加