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「僕の母は僕が2歳になったばかりの頃に亡くなりました。本の好きな女性だったと父からきいています。
顔も覚えていないのに、おかしな話ですが、あなたを見ていると、なぜか母を思い出すんです。
きっと彼女も大きなお腹を抱えて、僕に読むための本を探したりしていたんじゃないかと思うんですよ」
ゆごうさんの少し陰のある眼差し。その理由がわかった気がした。
それから私は暇を見つけては、【Hugo古書店】に通った。ゆごうさんが集めてきた子供向けの本をお腹の赤ちゃんに読み聞かせたり、ゆごうさんとお話ししたりして、楽しいひと時を過ごした。
いつ行っても一人のお客もいない。儲け度外視の完全に趣味でやってる店だ。
よく気のつく彼は、パイプ椅子ではなく木製の椅子にクッションを置いて、私のために特等席を作ってくれた。時には温かいココアまで作ってくれて。
まだ20代半ばくらいなのに、こんな生活をしているゆごうさんは、やっぱり謎な存在だ。
「失礼な質問だけど、これで食べていけるの?」
打ち解けてきたところで、私はストレートに訊いてみた。
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