本音とたてまえ

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別にソフトボールが好きなわけじゃない。 ただ、実際にやっているところを想像したとき、コートに入る時間が長いバレーに比べてソフトの方がいくらかマシなような、そんな… そんな、浅はかな考えからだった。 私は教壇に目を向け、実行委員会の司会を見守った。 「……では、基本的には立候補で決めたいと思います。出場したい種目のときに挙手をお願いします。 数がオーバーしたら話し合いかジャンケン。もし特に希望がない人は、最後に余っている枠に入ってもらいます」 『いいですか?』との委員の声に、クラス中から元気な返事が響く。 「では、まずは男子サッカー……挙手!」 サッカーはやはり男子には人気で、バラバラとおそらく予定数をオーバーする人数が手をあげた。 私はなんとなく、冬室くんの方へと目を向ける。 冬室くんはサッカーには挙手をせず、姿勢よく座って教壇を見ていた。 (……冬室くんは、何にするつもりなのかな) 視力聴力にハンデがあると言っても、病気は完治しているため、彼は普通に体育に参加している。 ただ視界の不便や、難聴によるバランス感覚の欠如など、時おり動作に違和感が出るようで、あまり得意とは言えないようだ。 (……うーん。あの中ではどれが冬室くんにとってやりやすいのかな) なんてぼんやり考えていた。
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