ことば

3/6
前へ
/96ページ
次へ
笠原日南子。高校一年生。 性格は暗くて、自分でいうのもなんだけど卑屈でネガティブ。 当然あんまり友達もいない。 それは昔からの性格で、いつも学校は息苦しくて嫌いだった。 友達がいなく、人とうまくしゃべれない私には、居場所がないのだ。 ……でも 今は少しだけ違う。 ** 学校についたのは、チャイムが鳴るギリギリ。 始業前の教室は雑談の声で、がやがやと騒がしい。 うるさいなあ、と内心毒気づきながら自分の席へと向かう。 …私にはこうして雑談できる相手がいないので、嫉妬しているのかもしれない。 「……っ、」 「きゃ……」 席に向かう途中、後ろからクラスメイトにぶつかられた。 相手の腕が軽く当たった程度なので痛くはないけれど、少し驚く。 「……ごめん!大丈夫?笠原さん」 かけられたのは、やや大きめの声。 ぶつかってきた相手……クラスメイトの冬室(ふゆむろ)くんは、すまなそうに顔を歪めた。 「……あ。き、気にしないで……私こそボーッとしてたから……」 「え?」 冬室くんが、左耳をこちらに向けるようにして聞き返す。 (……あ、しまった)    上手く聞こえなかったみたいだ。 「気にしないでっ、私こそごめんね……っ!」 少し声を張り上げるように言うと届いたようで、冬室くんは『わかった』と深くうなずいた。
/96ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加