小売店勤務 亜蘭純史(仮名)さんの話

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 うとうととしかけたころ、誰かが休憩室に入ってくるのがわかりました。話し声からするに複数の女子従業員のようでした。  彼女たちは食事をしながら、雑談を交わしています。そのうちに、誰かが声のトーンを落として言いました。 「ねぇ。この店ってさ、墓地をつぶして建てたらしいよ」 「え~!マジ?」と驚く声が聞こえるものの、私はそれを知っていました。ただ正確に言えば、昔墓地があった場所に建てられた工場がつぶれたので、その土地をうちの会社が買い取って店舗にしたということです。 「もしかしたらさ、なんか出たりして」 「夜のバイトは見た!とか?」 「あるある」  笑い声のあと、急に静まりました。しばらくの沈黙の後、 「どうしたのよ。そんな顔して」 「私、ここで働くようになってから、ずっと気になってたの」 「何が?」 「でも、ここが墓地だったと聞いて、わかったわ」  消え入りそうな震える声に、ほかの声も切迫したものに変わります。 「何よ。何がわかったのよ」 「時々、見えるの」  再び沈黙。 「え?何?冗談でしょ」  また沈黙。誰かの息を飲む音が聞こえるほどでした。 「白い着物を着た女の人がね、いつも同じ場所で正座してるのよ」 「どこなの?」  突然ガタガタと椅子を引きずる音。慌てて席を立った感じがしました。  何があったのだと薄目を開けて彼女たちの方を見ました。  全員が瞠目してこちらを向いていました。  視界の端に何かが映ったので、視軸をずらして納得しました。  首から肩にかけて重くなるはずです。  私の顔を、青白い顔をした女が恨めし気に見下ろしていました。  いつも私は、幽霊の膝枕で寝ていたのです。
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