0人が本棚に入れています
本棚に追加
うとうととしかけたころ、誰かが休憩室に入ってくるのがわかりました。話し声からするに複数の女子従業員のようでした。
彼女たちは食事をしながら、雑談を交わしています。そのうちに、誰かが声のトーンを落として言いました。
「ねぇ。この店ってさ、墓地をつぶして建てたらしいよ」
「え~!マジ?」と驚く声が聞こえるものの、私はそれを知っていました。ただ正確に言えば、昔墓地があった場所に建てられた工場がつぶれたので、その土地をうちの会社が買い取って店舗にしたということです。
「もしかしたらさ、なんか出たりして」
「夜のバイトは見た!とか?」
「あるある」
笑い声のあと、急に静まりました。しばらくの沈黙の後、
「どうしたのよ。そんな顔して」
「私、ここで働くようになってから、ずっと気になってたの」
「何が?」
「でも、ここが墓地だったと聞いて、わかったわ」
消え入りそうな震える声に、ほかの声も切迫したものに変わります。
「何よ。何がわかったのよ」
「時々、見えるの」
再び沈黙。
「え?何?冗談でしょ」
また沈黙。誰かの息を飲む音が聞こえるほどでした。
「白い着物を着た女の人がね、いつも同じ場所で正座してるのよ」
「どこなの?」
突然ガタガタと椅子を引きずる音。慌てて席を立った感じがしました。
何があったのだと薄目を開けて彼女たちの方を見ました。
全員が瞠目してこちらを向いていました。
視界の端に何かが映ったので、視軸をずらして納得しました。
首から肩にかけて重くなるはずです。
私の顔を、青白い顔をした女が恨めし気に見下ろしていました。
いつも私は、幽霊の膝枕で寝ていたのです。
最初のコメントを投稿しよう!