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「どういうわけか、貴様は儂を殺したくはないようだからな。この状況を利用させてもらうぞ」
フェンリルは“神威”によって、完膚無きまでに拘束された状態でも、恐ろしく冷静だった。
どうやら、この浮遊する尻尾だけで俺に挑むつもりらしい。
「本体でも勝てないのに、その切れ端が勝てると思ってるのかよ」
「軽い口が叩けるのも今のうちだぞ」
「あ……?」
フェンリルの言葉の意味はすぐに分かった。
俺を弄ぶように右へ左へと飛び交うフェンリルの尻尾。空中には、青白い光の軌道が残る。
俺はそれを目で追えなかった。
「なるほどね」
フェンリル自体も驚異的なスピードだったが、この尻尾はそれを優に超える。本体の二、三倍の速度はありそうだ。
頼みの“神威”はフェンリルの拘束に使っている。
「特異点に頼るのはあんまり好きじゃないんだけどな」
こんなところで躓くわけにはいかない。
さっさとこんな関門はクリアして、強者のところに行かないといけないんだからな。
好き嫌いを言っている場合じゃないか。
久しぶりにやるか。
特異点、発動。
ーーー〝創造主〟
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