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俺の特異点、〝創造主〟の能力は至ってシンプル。
ありとあらゆる物を創り出す能力。
創造物と、それを維持する時間によって、消費する死ミットが異なる。
また、創造物に対する理解が深ければ深いほど、完成度も高くなる。
ありとあらゆる物の中には、強力な武器や防具も勿論含まれている。
それは俺のSレート武器、“神威”も例外ではない。
俺の目の前に現れる包帯の塊。
“神威”の特性をほぼ完全にコピーした創造物。
性能は殆どオリジナルと変わらない。
「四の型、〝玄武〟」
新たに創造された“神威”が俺の肉体に巻きつく。
完成度を限界までに高めているとは言え、本物と比べると多少の違和感は禁じ得ないが、全くもって問題のないレベルだ。
レートSの武器の創造となると、コストも大きい。
“神威”の場合は、一分につき三十分の死ミットを消費する。
「あんまり悠長にはやってられないんでね」
“神威”の装着を終えた俺は力強く地面を蹴った。
四の型、〝玄武〟の特徴は、“神威”自体を肉体に装備することによる、身体能力の向上。そして、何よりも防御力の大幅な向上だ。
右斜め上方からこちらへ迫るフェンリルの尻尾。
ほとんどは視認できない。
来る方向くらいは追えるが、避けるのはまず不可能だろう。だが、問題ない。
キィンと金属音にも似た鋭い音が耳に響く。
フェンリルの尻尾が俺の脇腹で止まっていた。辛うじて、先端だけは包帯部分に僅かにのめり込んでいるが、所詮はその程度。
どんなにその尻尾が鋭く、強靭であっても、この“神威”の鎧を貫くことはできない。
無敵の鎧。
それが四の型、〝玄武〟。
「卑劣だと思うか?」
俺は動きを停止したフェンリルの尻尾を、“神威”でグルグルに巻き付けた。
フェンリルは何も言わず、こちらを見ているだけだった。
「これで今度こそチェックメイトだ。選ばせてやるよ、俺と共に来るか。ここで朽ち果てるか」
その目には、未だ勝機が見えているようにさえ思えた。
肉体も、頼みの尻尾も封じた今、奴に何が残っているというのか。俺は思考する。奴が見るその勝機とやらを。
「笑止」
フェンリルの口元が歪んだ。
果たして、俺の喉元に、何が届き得るというのか。
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