18.その時

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おそらく、リンを殺したのも楠木。 もしかしたら、あの黒い魔物(マモノ)の使役者もこいつかもしれない。 俺が楠木に飛びかかると、その間に巨大な人形が立ちはだかる。 その手を真っ赤に染まった不気味な人形。 指先の一つひとつが銃口になっている。 「楠木ィッッ!!!」 こいつだけは、ネイキッドの死に対し、何のリアクションも示していなかった。 それが、全て計画通りだったかのように。 「喚くな」 人形の指先が火花を噴く。 俺は漆黒のマントを広げ、向かってくる無数の銃弾をその闇の中に飲み込む。 「説明しろ。どこからどこまでがテメェが仕組んだ!? どういうつもりで、こんなことになってやがる!!」 俺は精一杯声を荒げる。 納得のいく答えが返ってくることはない。そう分かっていても、この怒りをぶつけないわけにはいかなかった。 「どこからどこまで……? 面白い質問する。賢い君には分かっているはずだろ。全てだよ」 「このゲスが……ッ!!」 オレは背中のブーメランを投げつける。 人形を避けるような、綺麗な弧を描いたそれは、楠木めがけて飛んでいく。 楠木は後ろへ跳び、ブーメランを難なく避ける。 「楠木……ッ!!」 間髪入れずに楠木との距離を詰めていたのは、獣化した猪熊だった。 目の前に立ちはだかる巨大な人形の両腕を一瞬にして引き千切り、頭部を噛み砕くと、そのまま楠木に猛進する。 一切の躊躇いもなく、右手に握られた剣が振り下ろされる。 楠木はそれすらも軽々と避ける。 「そこは間合いの中だ」 「ーー!?」 次の瞬間には、オレと猪熊は四体の人形に囲まれていた。 「なっ……」 巨大な人形。 さっき猪熊が倒した人形(もの)と同型だ。 その全ての指先は、銃口になっている。 「猪熊、逃げろ……!!」 間に合わない。 そこに人形が現れた時点で、その銃弾は不可避だった。 鳴り響く銃声。 人形は無感情に、内側に向かって銃弾を連射した。 他の人形に穴が開くことも、意に介していない。 オレは黒いマントで全身を覆い隠し、その弾丸の雨が過ぎ去るのを待つ。マントの外では、猪熊の悲鳴が虚しく聞こえた。
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