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おそらく、リンを殺したのも楠木。
もしかしたら、あの黒い魔物の使役者もこいつかもしれない。
俺が楠木に飛びかかると、その間に巨大な人形が立ちはだかる。
その手を真っ赤に染まった不気味な人形。
指先の一つひとつが銃口になっている。
「楠木ィッッ!!!」
こいつだけは、ネイキッドの死に対し、何のリアクションも示していなかった。
それが、全て計画通りだったかのように。
「喚くな」
人形の指先が火花を噴く。
俺は漆黒のマントを広げ、向かってくる無数の銃弾をその闇の中に飲み込む。
「説明しろ。どこからどこまでがテメェが仕組んだ!? どういうつもりで、こんなことになってやがる!!」
俺は精一杯声を荒げる。
納得のいく答えが返ってくることはない。そう分かっていても、この怒りをぶつけないわけにはいかなかった。
「どこからどこまで……? 面白い質問する。賢い君には分かっているはずだろ。全てだよ」
「このゲスが……ッ!!」
オレは背中のブーメランを投げつける。
人形を避けるような、綺麗な弧を描いたそれは、楠木めがけて飛んでいく。
楠木は後ろへ跳び、ブーメランを難なく避ける。
「楠木……ッ!!」
間髪入れずに楠木との距離を詰めていたのは、獣化した猪熊だった。
目の前に立ちはだかる巨大な人形の両腕を一瞬にして引き千切り、頭部を噛み砕くと、そのまま楠木に猛進する。
一切の躊躇いもなく、右手に握られた剣が振り下ろされる。
楠木はそれすらも軽々と避ける。
「そこは間合いの中だ」
「ーー!?」
次の瞬間には、オレと猪熊は四体の人形に囲まれていた。
「なっ……」
巨大な人形。
さっき猪熊が倒した人形と同型だ。
その全ての指先は、銃口になっている。
「猪熊、逃げろ……!!」
間に合わない。
そこに人形が現れた時点で、その銃弾は不可避だった。
鳴り響く銃声。
人形は無感情に、内側に向かって銃弾を連射した。
他の人形に穴が開くことも、意に介していない。
オレは黒いマントで全身を覆い隠し、その弾丸の雨が過ぎ去るのを待つ。マントの外では、猪熊の悲鳴が虚しく聞こえた。
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