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2.奇遇の季節
* * *
喧騒と煙草の臭いの中に俺はいた。
あちらこちらで思い思いの会話を弾ませ、中にはアルコールの魔力に毒され、上裸で逆立ちしているような輩もいる。あれが同い年の同じくらいの偏差値の人間だとは思いたくはなかった。
俺はこの春、大学生になった。
新入生歓迎会。
この時期になると、大学の各サークルや体育会は新入部員の獲得に躍起になり、新入生歓迎会という名の食事会や飲み会を、“先輩持ち”で度々開催する。
タダメシで新入生を吊り上げようという作戦らしい。
新入生も新入生でこの時期は友達作りに必死だったりもするため、そういった要因も相まって意外と人が集まる。
俺もそんな作戦にまんまと乗せられ、縁も興味もないフットサルサークルの新入生歓迎会に顔を出していた。大学生の冠を被ったような美人女学生に声を掛けられたのが運の尽きだった。美人局かよ、とも思った。
まあ、美人女学生に吊られたのは、俺ではなく連れのほうだったが……。
「おいおい、そんな偶然あるかよ!?」
俺の隣でまるで奇跡だとでも言わんばかりにそう声を上げたのが、その例の連れ――柳 秋人(ヤナギ アキヒト)だ。彼は今、目の前にいる二人の同級生の名前に驚いている。
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