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「えーっと、本名だよな?」
「本名に決まってるでしょ。あんまりしつこいと嫌われるよ、あんた」
俺の目の前に座る、綺麗な黒髪を後ろで束ねているのが白石 冬美(シライシ フユミ)。
切れのある目つきは、どことなくボーイッシュな印象を与え、その印象も手伝って随分と男勝りな女の子だった。
その隣に座るのが、東雲 ナツメ(シノノメ ナツメ)。
冬美とは対照的におしとやかな印象のボブヘア。服装は、白い半袖に藍色のキャミソール、茶色のガウチョ……と今時の大学生って感じが強い。
そして、俺はハル。
一之瀬 ハル。
秋人が何度も何度もしつこく言っているのは、この四人の名前にそれぞれ「春」「夏」「秋」「冬」が入っている神様のイタズラとも言える偶然について、だ。
「こりゃあ運命としか言えないだろ。なあ、ハル!」
俺に初めて話しかけてきたときも、「俺は秋なんだ、なんか奇遇だな」とか何とか言っていた気がする。運命なんていう胡散臭い言葉を使い出したら、それこそ巷のナンパ師と大差ないのではないか。
「こんだけの人数いたら、それくらいの偶然はあり得るだろ。運命なんて無闇に使うと女にモテないからな」
「相変わらず冷めてやがるなぁ」
相変わらず、と言っても彼と出会ってからまだ一ヶ月も経っていなかった。とは言え、学生生活が始まってからというもの、ほとんどこの男が横にいるのは確かだった。
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