2.奇遇の季節

3/6
前へ
/344ページ
次へ
秋人は気さくな男だった。 好奇心旺盛で何か珍しいことがあればすぐに首を突っ込んだし、誰か話題の人物がいればすぐに話しかけた。 おかげで彼の周辺にはコミュニティの網が張り巡らされていた。広く浅い付き合いではあるが、交流の幅は驚くほどで数え切れないほどの友達がいた。 反面、というか、それが災いしてなのか、トラブルも尽きなかった。入学三日目でラグビー部の三年生に目を付けられ、右頬を真っ赤に腫らして登校してきたこともあった。しかし、不思議なことに今ではその三年生とは頗る仲が良い。 俺とはかけ離れた人種で、今までに会ったことのないタイプだった。あまりにも生物として違いすぎると自覚しているが、それでも彼の隣にいて煩わしさを感じたことはなかった。そして、秋人も同様なのか、よく俺に付いて回った。 何が気に入られたのかも分からなかったが、俺は俺で退屈しなかったので、この関係が気に入っていた。 「ナンパ師ねぇ。なんかそう言われると、そんな気がしてきた」 切れ目の女、冬美が言った。 「確かに……。このやり取りがナンパの巧妙な手口に思えてきた」 それに同調するようにナツメも続く。     
/344ページ

最初のコメントを投稿しよう!

87人が本棚に入れています
本棚に追加