古本屋の琴葉さん

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会社帰りにふと立ち寄った古本屋で、俺は琴葉という女性に恋をした。 俺が本を読んでいると、彼女は突然現れて友達と会話を始めたのである。 会話の内容からして、彼女は俺の理想とする女性のそれだった。 容姿から性格まで、全てが…… 今までろくな出会いが無く、色んな女性に裏切られてきた俺にとっては、琴葉さんは最後の希望のように映った。 でも…… 俺が琴葉さんと結ばれる事は無い。 どんなに俺が琴葉さんを見ていても、彼女は俺の存在にすら気付かない。 仕方の無い事だ…… 俺とは住む世界が違うのだから…… その日も俺は、立ち読みしながら琴葉さんを見て本を閉じた。 そして、彼女の容姿を想像しながら古本屋をあとにする。 すると突然誰かに声をかけられた。 「あの……」 俺は振り返りそこに居る人物を見る。 「あ……あなたは……」 「良かったらこの本、どうぞ。いつも同じ本を見てますよね?でも、いつも買わずに帰る……」 俺は照れ臭くなり頭をかく。 「確かにこの本、プレミアがついてて高いですよね。手が出ないのもわかります。でも、本て好きになってくれた人の手元にある方が幸せなんだと思うんです。だから……どうぞ。代金の方は私が何とかしますから」 こんな事があるだろうか? 俺は「ありがとうございます」と言い、本を受け取った。「代金はいつか必ず返します」 「ちなみに……」 「え?」と俺は本を胸に抱き聞き返す。 「どうしてそこまでその本が好きなんですか?」 その質問に対して俺は答えた。
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