別れの日

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「だって先生、さっきから一回もこっち見ないもん。」 先生はなおも振り向かない。 「怒ってなんか、いませんよ。顔を見たら泣いてしまいそうだからです。」 先生は抑揚をつけずにそう言った。 心にもない事を… 「私が無理やりキスしたから?」 私はじっとして動かずに、そのまま答えを待った。 先生は何も言わない。 先生の長い指先から立ち昇る煙だけが、時の流れに寄り添っていた。 ーそういうことか。 先生は、あれを無かったことにしたいんだ。 鼻の奥が、ツンと痛んだ。
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