3人が本棚に入れています
本棚に追加
「だって先生、さっきから一回もこっち見ないもん。」
先生はなおも振り向かない。
「怒ってなんか、いませんよ。顔を見たら泣いてしまいそうだからです。」
先生は抑揚をつけずにそう言った。
心にもない事を…
「私が無理やりキスしたから?」
私はじっとして動かずに、そのまま答えを待った。
先生は何も言わない。
先生の長い指先から立ち昇る煙だけが、時の流れに寄り添っていた。
ーそういうことか。
先生は、あれを無かったことにしたいんだ。
鼻の奥が、ツンと痛んだ。
最初のコメントを投稿しよう!