第一章 木の上の神様

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 どこもかしこも、軋んで音がするので、工場自体が悲鳴を上げているようにも感じる。 「あ、又、風が出てきましたね」  階段を登る軋みではなかったらしい。 「この工場は、前に一度、倒産の危機に遭いました」  取引先が倒産し、資金繰りがどうにもならなくなった。 この工場も倒産という時、社長が自殺していた。 その保険金で会社は持ち直し、現在まで継続していた。 「今の社長の父親が自殺しています。これは、会社で言うのはタブーですけどね」  そして、社長の弟が、今回、工場閉鎖の案を出したという。 社長は、祠堂 啓一(しどう けいいち)、 弟は祠堂 佳嗣(しどう けいじ)という名前であった。 佳嗣は工場の運営には関わっていなかったが、資金を出資していた。 佳嗣の職業は理学療養士で、妻が看護士であった。 佳嗣には子供が二人いて、子供の面倒は啓一の妻がみている。
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