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啓一と佳嗣は、父親の工場を訪ねて電車に乗ってやって来た。
その日は、啓一の誕生日で、父親のいる工場からレストランに行き、
好きな物を食べる予定であった。
父親が仕事を終わらせるのを待っていると、いつも真夜中になってしまうので、
自分で迎えに行きなさいと母親が言った。
電車に乗っていると、雨が降り出し、やがて大雨になった。
風も強くなってきて、駅から出ようとすると、佳嗣が怖いと泣き出した。
駅の外は暗く、神社の森が狂ったように揺れていた。
木の揺れる音と、雨音が暗い空に響いて消える。
啓一は。佳嗣を宥めて、あれは神社の森で、木が揺れるのは上に神様がいるせいだと言った。
佳嗣は、じっと木の上を見て、大きく頷いた。
そして二人で歩き出した。
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