第四章 木の上の神様 四

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 しかし、今度は雷まで鳴ってきた。 耳を塞いで工場まで走ると、工場の事務所には誰もいなかった。  父親を探して、事務所を出ると工場に入った。 でも、そこにも誰もいなかったが、階段の上では、二階に光が見えていた。 工場の二階に登ってみると、暗い窓の外が、時折、雷で光っていた。 二人は幾度か雷で蹲り、やっと動きだしたが、二階にも誰の姿もなく、 見えていた光も消えていた。  鍵が開いているのに、事務所にも工場にも誰もいない。 泣きたい気分で、母親に電話を掛けると、家の電話は鳴ったままで誰も取ってはくれなかった。  家に帰ろうと、再び駅に向かうと、雨が止んだ。 途中、神社の森が燃えていた。
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