第五章 木の上の神様 五 

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「工場を案内した女性は、誰なのでしょう」  工場の内部に詳しく、特に祠堂家に詳しかった。 「それは……分からないのだよね」  中学生に聞いても仕方がないが、里見は真剣に考えてくれた。 「氷花さんは、自殺の意味が分かっていない。 ただの死で、事故とも病気とも違うとしか認識していない」  里見に指摘されるとは思っていなかったが、その通りであった。 だから、俺は事件を予測できても、人間は理解できない。 「自分を殺すという、殺人なのかな?」  全然違うと、里見は手で膝を叩いていた。
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