第六章 夏は草に埋もれて

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「とんでもないことですか?」 「そうなのよね……」  君島は黙って聞いていた。 どうも、君島はこの事件を知っていたようだ。  君島の隣に、辺見も座っていた。 辺見は、朝子の息子のように見え、若く見えた。 辺見のどこが、若く見せているのか分からないが、啓一と兄弟と言っても頷ける。 それに、顔もよく似ていた。 「幸太郎の妻に連絡すると、泣き崩れて言った……」  佐藤は、学校側に挨拶するのを最後に、教職人生を終了する。 教職というのは、夢だったのに、こんな終わり方になるなんて、 自分の甘さが悔やまれる。 でも、生徒には咎めがないようにしたい。  佐藤の妻は、私に謝罪はないのかと、かっとなってしまったという。 妻も皆に謝り、近所に白い目で見られたのに、佐藤は生徒の未来しか考えていなかった。
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