第六章 夏は草に埋もれて

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 外を見ると、雨が降り出していた。 雨は、やがて本降りになり、土砂降りになった。 「遺書があれば、そんなに深く捜査されないかもしれない」  遺体を移動し、まず行方不明の届けを出し、自殺で発見される。 骨になっていれば、ただの首吊り以外は、分からないだろう。  そこで森を探すと、毎日のように見ている神社の森を思いついた。 神社の森は深く、余り奥地には人が入らなかった。  皆で遺体を運び、雨の中で遺体を吊るした。 見つからないように、高所につり上げ、皆で手を合わせて去った。 「しかし、予想も出来なかった。まさか、雷が落ちるなんて」  金属を持っていたのかもしれない。それに、一番高い木を選んでいた。 「しかも、私は上着を忘れていた」  雨に濡れて、動き難かったので上着を脱いで木に掛けていた。 「……上着に遺書があって、私が死んだ事になってしまった」
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