第六章 夏は草に埋もれて

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「啓一の誕生日だった……済まない事をしてしまった」  仁美の様子を語ってしまった。 俺は、野菜をそのまま食べて、洗いなさいと園児のように叱られた。 「そうだったね。もう一つ、心残りがあったね」  それは啓一夫婦に、子供が産まれなかった事であった。養子も不審死している。 「どうにも、祠堂は不審な死が多くてね。事故死なのかな。呪われているように思える」 「どうして、呪われるのですか?それに、どうして秘密を打ち明けてくれたのですか?」   理由もなく、辺見が呪いなどという言葉を口にするとは思えなかった。 それに、長く秘密であった事を、俺達に話したのは何故なのであろうか。
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