第六章 夏は草に埋もれて

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「私も幸せでした。君島先生は、本当に優しくて、 しかも、あれこれ気遣ってくれて、私は二人の夫を得た」  朝子もそれで良かったらしい。 客観的に見ると、君島と辺見は、肉体関係のある本物の夫婦のように見えた。 阿吽の呼吸が合っている、そんな雰囲気がある。 辺見と朝子は、どこか壁はあるが、普通の夫婦のようであった。 そこに問題はない。  朝子と君島は、微妙な雰囲気だが、ここに肉体関係がないのは見て取れる。 二人の距離が離れている。 肉体関係がないと、互いに近寄り過ぎると、僅かに警戒が残るのだ。  しかし、朝子が君島を見る目は、尊敬であった。悪意は微塵もない。
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