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「その一歩でしたか、俺達」
「よく覚えていたね。いい生徒だったよ。一を教えると、ムキになって十を知ろうとしてくる。
でも、気付くと、十を超えているような、優秀な君達だった」
君島は、ラーメン屋松吉で俺達を見て驚いたが、
その後、遠見や里見に作った端末を見て納得したという。
万人に使用可能だから、個人も使用可能というのは誤りで、
合った物を使用できる喜びというのが、物作りであるらしい。
しかし、遠見や里見に使用した技術は、やがて万人の使用する物になるのかもしれない。
「君達は万人受けではなく、個を見ている。これからの世の中で、いつか、
花開く技術だと思う」
だから、俺達が祠堂に関わり、訪問を求めた時に、君島と辺見は、
一歩を踏み出す決意をしたという。
「それにね、君達は既に一を知った。ムキになって十を知るだろう。
でも、追及されたくはないしね。先に言ってしまえば、これを公表するかが焦点になる。
それは、君達の判断と正義に任せる」
君島は潔い。
俺は、元より公表するつもりも、正義を追うつもりもない。
ここに犯罪があったとしても、これが罪かというと、俺には罪ではない。
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