第六章 夏は草に埋もれて

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 食事が終わると、朝子は具合が悪いので帰ると言った。 既に、顔は土色で、吐き気もあるようであった。 「ゆっくりしていってね」  朝子が帰ってゆくと、君島は改めて俺達を見た。 「大学では、君達が二人きりでいるところは見なかったね」  それについては、再会したとしかいいようがない。 「これは、教師ではなく、ただの男の話だと思って聞いて欲しい。 私は、男性しか愛せない」  朝子も闇を抱えていた。 夫婦でありながら、辺見も君島しか見えていなかった。 「辺見君、まあ学生時代は祠堂君だけどね、女性に人気でね、私は手を伸ばせなかった」  君島も友人でいいと思っていた。 しかし、工場の相談をされた時に、どうしょうもなくなり抱いてしまったという。 そして、一度、手に入れてしまうと、止まらなくなっていた。
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