第六章 夏は草に埋もれて

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「腕の中に愛しい人が眠るという感動で、私は浮かれてしまっていた」  辺見にとっては、君島が最初の男で、予定では君島だけしか男を知らないまま、 死んでゆくという。 「最初は驚いたけど、君島にあげられるものは、体以外に無かったからね」  どこか、温度差はあるが、君島と辺見は相思相愛らしい。  当時、辺見は商品の開発、君島との関係で家に戻る時間が減っていた。 辺見にとって君島との関係は、浮気というよりも本気になり、 しかもビジネスでもあったという。 新商品や新技術が、会社の存続の為には欲しかった。 「私は、そんな辺見君の弱みに付け込んで、体の関係を要求した。 辺見君を一から教えて、自分の好みに育てるのは、快感だった。 徐々に開いてくる肢体を見るのは、私の人生の全てだった……」  週に一回の関係を続けていると、辺見はどんどん洗練されて綺麗になっていった。 辺見も初めて、愛されるということを知ったのだ。
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