第六章 夏は草に埋もれて

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「自殺の時期が、朝子が第一子を産んだ翌日でした……」  これは偶然であったのだろうか。 「……祠堂は呪われていました。 私の祖父も、地元の有力者である男性の、愛人と噂されていました。 祖父は、ただの学友だと否定していましたが、家族は知っていました」  その有力者は、東京に普段は住んでいたが、地元に帰ってくると必ず、 祠堂の離れに泊まった。 祠堂と酒盛りをするためと言っていたが、離れを造らせたのもその有力者で、 酒盛りの準備が済むと家人を遠ざけた。  夜通し離れには明かりがあり、呻き声のような喘ぎが響いていた。 それに、家の軋みがいつまでも続く。 翌日になると、乱れた布団が残り。激しく愛された跡の残る祖父がいた。
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