第六章 夏は草に埋もれて

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 女性ならば妊娠して、自分の子を産んでくれるという絆がある。 男女は、親になるというプロセスに進める。 でも、男同士では、永遠に恋人のままでいるしかないのだ。  恋人という淡い関係を保つには、捕まえているしかない。 「さっくり終わらせるよ」  俺は慶松の顔を見る。 慶松が、さっくり終わらせた事などない。 「また、嘘だろ?」  慶松が笑っていた。  そこで、又、端末の資料に戻る。 遠見は、祠堂の家の過去を調べていた。  確かに、祠堂には離れがあったが、今はない。 どうして無いのかというと、離れのみ放火に遭っていた。 「どうしたの?氷花、唸っているよ」 「うん。祠堂家の呪い……だな」、  遠見の資料の内容を、声を出して読んでみた。 「え、放火されているのか……」  離れだけ燃えたというのが、どこか意図的に思える。
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