第七章 夏は草に埋もれて 二

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 祠堂の家の離れは、放火により全焼していた。 その離れには、女性の焼死体があった。 「辺見さんの祖母だよね。当時、五十五歳で、祖父が無くなってから十五年が経過している。 会社経営は、息子に譲っていた」  その時の保険金で、老朽化した実家を建て替えていた。  その祖母は、普段は離れに近寄る事が無かったが、 その日は命日で添い寝すると言って離れに行った。 それは、毎年の事であったので、家族は誰も気にしなかった。  でも、その日は付近で放火が相次いだ。 家人は、別の火を消しに行き、自分の家から火が出ている事に気がついた。 慌てて家に戻ると、離れから大きな火が出ていたという。
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