第一章 木の上の神様

16/30

188人が本棚に入れています
本棚に追加
/604ページ
 そこで、つい名刺交換してみると、互いに驚いてしまった。 「君、K商事なのか。商社だよね」  相手は、証券会社であった。 「証券会社の営業なのですか?」  相手は言えないが、大口顧客を周期的に訪問しているらしい。 長くこの土地の担当であったようなので、つい、祠堂の工場の具合を聞いてしまった。 「ああ、古い工場だよね」  ホテルのロビーであったので、温かいコーヒーを注文し、相手に勧める。 柴田までもが、一緒に話しを聞いていた。 「祠堂はね、何というのか、真面目な家系だけど色々と噂があってね……」  まず、啓一には子供はいないとなっているが、養子が一人いたのだそうだ。 それが、ある日、行方不明の後に死亡になっていた。 保育園児で、お昼寝の時間にトイレに行くと言い出し、そのまま消えてしまった。 保育士が探しまわっても見つけられず、その数日後、床下で凍死の状態で発見された。
/604ページ

最初のコメントを投稿しよう!

188人が本棚に入れています
本棚に追加