第七章 夏は草に埋もれて 二

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「ちょっと、慣らそうか」  やはり、慶松の指の方が安心する。 慶松の指は太くはないが、長く強い。それに温かくて、安心する。 「……氷花!この状態で居眠りをするかな!」  慶松が怒るのは無理はない、この状態で居眠りはまずいのだが、 すごく安心してしまうのだ。 「眠る前に、入れておくよ」  慶松は俺をうつ伏せにベットに押し倒すと、腰を持ち上げてきた。 俺の下に枕を入れると、しっかりと固定する。 「氷花、入れるよ」  慶松の口調はきつかったが、そっと添えるように押し込んできた。 「……う……きつい」 「俺もきつい。懲りたら、居眠りするな」  俺が頷くと、慶松の笑い声が聞こえた。慶松だって、緊張感はない。 つられて笑うと、体の力が抜けてゆく気がした。
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