第八章 夏は草に埋もれて 三

4/24
前へ
/604ページ
次へ
 信哉の運転は、丁寧で慎重であった。 元々、病気になる前も運転していたらしい。 「自分で動けるというのは、いいね」  信哉は楽しそうであったが、俺は、結構怖かった。 信哉のブレーキが、ゆっくりなのかもしれない。  そこで、仕事の話をしてしまったのだが、信哉は休職中になっていた。 でも、車椅子でもいいので、出社すると決めたらしい。 「車椅子から、杖に変えるつもりだけどね。無理しないで、少しずつ回復させるよ」   信哉の笑顔は、爽やかだった。長い悩みから、抜け出したという感じがする。  信哉は他に、妹の静香が使用していたエレベータが爆破されたというのを、 かなり気にしていた。
/604ページ

最初のコメントを投稿しよう!

188人が本棚に入れています
本棚に追加