第八章 夏は草に埋もれて 三

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「……こんなに難しい条件を、この犯人が考えたとは思えない」  信哉は、犯人は捕まったのではなく、野放しなのだと主張していた。 それには、俺も賛成ではあるが、B君は捕まえられない。 「この犯人は、仕事を切られた悔しさを爆発で表現しました。 でも、これでは、この男の会社の社員は、却って皆失業者になってしまった」  これでは、会社の存続が難しいであろう。 「それはね、この会社は借金で自転車操業だった。 そこで、仕事を切られたので、倒産は次の決済日だった」  それでも、爆破によって終了を選ぶのはどこかおかしい。 「あ、ごめん。一度、休憩するね」  信哉は、一時間に一度の休憩と決めていた。 「あ、次、俺が運転します」 「それは、ダメ。俺が運転するスケジュールで来ているから」  この計画性の徹底は、どこか浅見に似ている。
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