第八章 夏は草に埋もれて 三

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「静香からメールなのかな?」 「そうです。会社の様子が来ました」  そこで、浅見が男性にメールしているのを見るのは、父親以外は初めてだという。 「婚約者がいらっしゃると聞きましたけど?」 「メールという間柄ではないよ」  浅見と婚約者は、絵に描いたようなカップルだという。 でも、優し気な笑みの中には、愛情は無かった。 「さてと、出発しようか」  再び車で走りだすと、信哉が歌を歌っていた。 「お上手ですね」 「そうかな。でも、最近は全く歌っていなかったけどね」  信哉は、どうしてなのか理由は分からないが、 俺と会って、現状がすんなり飲み込めたという。 信哉は、病気は治っても、自由に歩けなかった。 これで、治ったなんてと否定していたが、リハビリすればいいのかと、 すんなり思えたらしい。
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