第八章 夏は草に埋もれて 三

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「……虫が嫌いなのです」  多少の虫は平気であるのだが、足が多いもの、 蜘蛛やムカデ、ダンゴムシなど大嫌いであった。 「それと、根気がありません」  何年も考えて野菜を作ってゆくなど、俺にはできない事であろう。 「それと、俺、電気が見えるのです」  最後は誰にも信じて貰えない事であった。 今も、信哉の手足に流れる、電気信号が見えている。 「……うん。そんな感じだよね。氷花君は、俺の悪い所を、説明しなくても凝視している。 見えているからだよね」  信哉の言葉には、嘘はない。 「でも、氷花君。それは、どうして俺に言ったの?他の人には秘密にしているのでしょう?」  それは、どうしてなのか。俺にも、よく分かっていなかった。
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