第八章 夏は草に埋もれて 三

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 図面を見ると、よく出来ているのだが、どこか無駄があった。 俺が無駄を指摘すると、改良版が送られてきた。 今度は、無駄を使用する方向で再設計されていた。 「無駄ではなく、可能性なのか……」  辺見の設計の方向性が分かる。 辺見は、最初から変容してゆく部品の未来をみている。 でも、このままの状態で改良するよりも、次の部品を考えた方がいいのではないのか。 そこが、俺と辺見の考え方の違いであった。  でも、辺見の変容可能な部品というのも、パズルのようで面白い。 「まあ、アリではあるかな」  図面に笑っていると、辺見が俺にコーヒーを手渡ししてきた。  どこからコーヒーが出てきたのかと、周囲を見てみると、ポットが用意されていた。 「ありがとうございます」  コーヒーを飲むと、再び図面を見る。 今度は各種の測定値を確認してみた。 まずまずの性能で、売っても問題はない。手堅い製品で、汎用性もある。
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